九州ええもん見っけ隊
(更新)
九州ええもん晩酌録 “本格焼酎女王蜂と佐世保豆乳、湯かけ鯨で一杯”

今回の「九州ええもん晩酌録」は、ちょっと面白い組み合わせでいきます。
鹿児島の霧島市の国分酒造さんの本格焼酎、その名も「女王蜂」。
この一本は、「まいぷれ霧島・姶良」を運営するご同輩からいただいたものです。
さて、そこで用意したのが、長崎では昔から馴染み深い“湯かけ鯨”です。
塩蔵された鯨の皮を湯通ししたもので、プリッとした食感と脂の旨味が特徴。ポン酢や辛子酢味噌で食べるのが定番です。
そして今回、もうひとつ大事な役者が登場します。
それが、佐世保で昔から親しまれている、ビニールチューブ入りの豆乳。
水割りでも、ロックでも、炭酸割りでもなく、まさかの豆乳割り。
しかも今どきのおしゃれな紙パック豆乳ではありません。
昔ながらの、ビニールの袋のような、チューブのような、あの独特の容器に入った豆乳です。
子どもの頃、冷蔵庫に入っていたあの感じ。
手に持つと、ぷにゅっとして、先っぽを切って飲む。
なんとも素朴で、懐かしくて、ちょっと不器用で、でも妙に愛おしい。
鹿児島・霧島の女王蜂。
長崎の湯かけ鯨。
佐世保の古式ゆかしき豆乳。
いやぁ、並べてみると、なかなか濃いメンバーです。
今夜の晩酌、ちょっとした九州サミットになってまいりました。

『女王蜂、名前からして艶っぽい』
霧島市の国分酒造さんの本格焼酎、「女王蜂」。
まず、この名前がいいですね。
女王蜂。
焼酎の名前としては、なかなか強い。
晩酌のテーブルに置くだけで、こちらがちょっと緊張します。
「今夜は女王蜂をいただきます」なんて言うと、なんだか少し背筋が伸びる。
正直に言いますと、私は焼酎の製法や麹のことに、そこまで詳しいわけではありません。
ただ、名前も味わいも気になったので、少しネットで調べてみました。
すると、この女王蜂は、黄金千貫という芋を使い、黄麹で仕込まれている焼酎とのこと。
霧島山系の伏流水を使っているとも紹介されています。
なるほど、そういう背景があるのかと、飲んだあとに知るのもまた楽しいものです。
裏ラベルには、「焼酎は生きております」という言葉がありました。
これは、酒好きの親父には響きますね。
焼酎が生きているなら、こちらもちゃんと向き合わんばいかん。
まずは水割りでひと口。
口当たりはすっきり。
芋焼酎と聞いて思い浮かべるような、どっしりした香りや濃厚な芋の押し出しは、思ったほど強くありません。
むしろ軽やかで、華やかで、飲みやすい。
ふわっと甘みがあり、あと味はスッと引いていく。
「あら、これは飲みやすかね」と思った瞬間、もう一口いきたくなる。
こういう焼酎は危ないですね。
強く主張しすぎないぶん、こちらのガードが下がります。
ロックも試しました。
氷で冷えると、香りがきれいに立って、より涼しげな印象になります。
鹿児島の芋焼酎というと、勝手に“男っぽい酒”を想像していたのですが、この女王蜂はどこか上品です。
さて、ここまでは普通の飲み方。
問題はここからです。
この女王蜂を、佐世保の昔ながらの豆乳で割ってみようという、我ながら少々無茶な思いつき。
でも、酒の楽しみは、ちょっとした冒険にあります。
うまくいけば発見。
失敗しても、それはそれで晩酌のネタ。
66歳にもなると、失敗も酒の肴になるから便利です。


『ぷにゅっと懐かし、佐世保豆乳』
今回、どうしても少し語りたかったのが、この佐世保のチューブ入り豆乳です。
湯かけ鯨ももちろん長崎らしい酒肴ですが、この豆乳には、また別の意味での“地元感”があります。
観光パンフレットに載るような名物というより、もっと生活に近い味。
子どもの頃の冷蔵庫の中に、普通に入っていたような、そんな懐かしさです。
この豆乳、まず容器がいい。
今の豆乳といえば、紙パック入りで、味もいろいろ。
プレーン、抹茶、コーヒー、バナナ。
ずいぶんおしゃれになったものです。
ところが、佐世保のこの豆乳は違います。
ビニールチューブのような、細長い袋に入っている。
手に持つと、ぷにゅっとやわらかい。
瓶でもない。缶でもない。紙パックでもない。
まっすぐ立たない感じも、なんだか愛嬌があります。
冷蔵庫から出して、先っぽをハサミで切る。
すると、白い豆乳がすっと流れ出てくる。
このちょっとした手間まで含めて、なんとも懐かしいのです。
便利でスマートな今の飲み物と比べると、少し不器用。
切り口を間違えると出すぎるし、持ち方を間違えると、ぴゅっと出る。
でも、その感じがまたいい。
最後は袋を指でしごいて、きれいに飲みきる。
そこに、妙に人間くさい温かさがあります。
味わいは、さっぱりとしていて、やさしい甘みがあります。
大豆の風味はありながらも、青臭さや渋みはなく、後味はすっきり。
昔ながらの見た目とは裏腹に、飲み口は意外と軽やかです。
飲むと、子どもの頃の台所や、風呂上がりの冷蔵庫や、夏休みの午後の空気まで、ふっと思い出してしまう。
私にとっては、ただの豆乳というより、佐世保の記憶そのものです。
気取らない。
飾らない。
でも、ちゃんとやさしい。
そんな豆乳を、鹿児島の本格焼酎「女王蜂」と合わせてみる。
これは、ただの割り材ではありません。
佐世保の懐かしさを、霧島の焼酎にそっと混ぜるようなものです。
グラスに氷を入れ、女王蜂を注ぎ、そこへチューブ豆乳をさらっと注ぐ。
白く濁ったグラスを見た瞬間、これはもう普通の焼酎ではありません。
佐世保の昭和が、鹿児島の女王蜂にそっと寄り添ったような一杯です。


『湯かけ鯨で、長崎の一切れ』
もちろん、今回の酒肴は湯かけ鯨です。
長崎に暮らす者にとって、鯨はどこか特別な食文化です。
昔は、正月や祝いの席、親戚の集まりなどで、鯨料理を見かけることがありました。
今では昔ほど日常的ではないかもしれませんが、それでも長崎の食の記憶の中に、鯨はしっかり残っています。
湯かけ鯨は、塩蔵された鯨の皮を湯通ししたもの。
解凍してそのまま食べられ、ポン酢や辛子酢味噌でいただくのが一般的です。
プリッとした食感と脂の旨味が特徴で、大葉や玉ねぎスライスと合わせてもおいしいとされています。
今回は、シンプルにポン酢で。
薄めに切った湯かけ鯨をひと口。
まず来るのは、プリッとした独特の歯ごたえ。
そのあと、じわっと脂の旨味が広がります。
魚とも肉とも違う。
あくまで鯨。
この独特の存在感は、やっぱり長崎らしい。
若い頃は、こういう味の良さが今ひとつ分かっていなかった気がします。
でも年齢を重ねると、派手なご馳走より、こういう“土地の記憶”を持った食べ物がしみじみ旨い。
湯かけ鯨を噛みながら、
「ああ、長崎やなぁ」と思う。
そして、その脂を女王蜂がどう受け止めるか。
さらに、豆乳割りがどう包み込むか。
ここからが、今夜いちばんのお楽しみです。

『豆乳割りで、まさかの丸さ』
まずは、女王蜂を水割りで湯かけ鯨に合わせてみました。
これは素直にうまい。
女王蜂のすっきりした飲み口が、湯かけ鯨の脂をさらりと流してくれます。
ポン酢の酸味とも相性がよく、あと味も軽い。
芋焼酎なのに重たくならず、湯かけ鯨をもう一切れ、そしてもう一杯、と誘ってくる感じです。
次に、いよいよ豆乳割り。
グラスに氷を入れ、女王蜂を注ぎ、そこへ佐世保のチューブ豆乳をさらっと注ぐ。
白く濁ったグラスを見て、正直、最初は少し不安になりました。
「これは、やってしまったかもしれん」
そう思いながら、ひと口。
ところが、これが意外にも合う。
豆乳のやさしい甘みとさっぱりした飲み口が、女王蜂のすっきりした味わいをふわっとやわらげてくれます。
焼酎の角が取れて、口当たりも穏やかです。
そこへ、ポン酢をまとった湯かけ鯨をひと切れ。
湯かけ鯨の脂の旨味に、豆乳割りのやさしさが寄り添います。
水割りは、脂をすっきり流す感じ。
豆乳割りは、脂を丸く受け止める感じ。
この違いが面白い。
万人向けかと言われると、そこは分かりません。
でも、焼酎を少しやさしい口当たりで楽しみたい人や、佐世保の豆乳に懐かしさを感じる人には、なかなか楽しい一杯だと思います。
水割りは、女王蜂のきれいな飲み方。
豆乳割りは、女王蜂の佐世保滞在記。
そんな感じです。
今回の主役は、鹿児島・霧島の本格焼酎女王蜂。
そこに長崎の湯かけ鯨を合わせ、さらに佐世保の昔ながらのチューブ豆乳で割るという、なかなか自由な晩酌になりました。
女王蜂は、飲みやすく、華やかで、すっきり。
湯かけ鯨は、長崎の食文化を感じる一切れ。
そして豆乳は、佐世保の懐かしさをそのままグラスに注いだような存在でした。
水割りは、すっきり王道。
豆乳割りは、やさしく、まろやかな冒険。
でも、この冒険が実に楽しい。
今夜は、鹿児島と長崎と佐世保が、ひとつの晩酌でつながりました。
こういう出会いがあるから、九州の酒と食は面白い。
いやぁ・・今日も、ええもん見つけたわ~

霧島の自然と情熱が醸す、唯一無二の本格焼酎
鹿児島県霧島市の自然に抱かれた国分酒造は、霧島山系の清冽な伏流水と、麹造りに最適な自社栽培米「夢十色」にこだわる本格焼酎蔵です。看板銘柄の「さつま国分」をはじめ、芋100%で醸す革新的な“いも麹”「芋」や、絶滅の危機から復活させた幻の芋「蔓無源氏」など、素材の個性を最大限に引き出した珠玉の銘柄を揃えています。
一つひとつ手作業で行う「芋切り」や、徹底した衛生管理を経て生まれる一滴は、深いコクとキレが自慢。さらに、売上の一部を寄付する活動や無料の水汲み場の提供など、地域への愛も大切にしています。伝統に甘んじず挑戦を続ける地域活性化にも寄与する酒造場です。
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